ふるさと納税をした場合、会社での年末調整のやり方は?ふるさと納税と年末調整の関係性について、わかりやすく解説!
とてもお得なふるさと納税ですが、会社員がふるさと納税を行った場合の年末調整はどうするの?という疑問にお答えいたします!
そもそもふるさと納税とは何か?からはじまり、年末調整の趣旨や確定申告も絡めた関係性も解説いたしますので、是非最後までご覧ください。
目次
1. ふるさと納税の基礎知識やメリット
はじめに、そもそもふるさと納税とは何なのか、ふるさと納税を行うことによるメリットや効果的な活用法をお伝えします。
1-1 ふるさと納税制度がはじまった理由
首都圏に人口が集中している現在ですが、元々首都圏出身ということではなく、地方から移住してきた人が数多くいます(私もそのなかの一人ですが)。
幼少期を過ごした自治体(ふるさと)において医療や教育などの様々な住民サービスを受けて育ちましたが、都心に移り住んだことにより、生まれ育ったふるさとではなく現在住んでいる都心へ税金を納めていることになります。
そのため、現在住んでいる都心ではなく、自分を育んでくれた「ふるさと」に納税することができても良いのではないか、という思いからふるさと納税制度がはじまりました。
1-2 ふるさと納税の仕組み
個人がその年の1月1日から12月31日までの1年間に得た所得をもとに、翌年度に納める住民税の額が決定されます。そして、会社員の方は翌年の6月から次の年の5月までの1年間の給与から住民税が天引きされることになります。これを特別徴収と言いますが、確定申告をする場合に普通徴収(給与から天引きではなく、自分で納める)に変更することも可能です。
1月1日から12月31日の間にふるさと納税を行った場合は、自治体へ寄付した額の合計マイナス2,000円が翌年6月から納めることになる住民税から控除されることになります。
そのため、ふるさと納税を行った場合は、しなかった場合と比較して「自己負担額が2,000円増える」「本来の住民税は翌年6月から次の年の5月までに支払うが、その分の前払いを行っている」という違いがあります。
1-3 ふるさと納税のメリット
ふるさと納税を行った場合のメリットは、何と言っても自治体から貰える「返礼品」になります。寄付した額の3割以下(2023年10月に制度改正が行われ、上限が3割となりました)の、自治体に関連した返礼品を受け取ることができ、例えば30,000円の寄付を行った場合は9,000円以下の返礼品を受け取ることができます。
そのため、自己負担は2,000円増加するものの、9,000円相当の返礼品を受け取ることができるため、差し引き7,000円程度お得になります。
また、ふるさと納税を行うサイトによってはポイントが付与される場合があるため、さらにお得になっています。
1-4 返礼品の選択方法
一見すると難しいような制度に思えるかもしれませんが、その方法は非常に簡単です。ふるさと納税を行っているサイトに行き、欲しい返礼品を選んで購入(寄付)する。
たったこれだけですので、普通のネットショップで買い物をする場合とほとんど変わりません!
1-5 ふるさと納税の手続き
上記1-4のとおり購入(寄付)しただけでは翌年度の住民税は安くなりませんので、税額控除を受けるためにもう1ステップ必要になります。そのための方法としては、次の2つがあります。
ワンストップ特例制度
そもそも確定申告をする必要がない方で、ふるさと納税を行った自治体が5以内であれば、ワンストップ特例制度を選択することができます。ワンストップ特例制度は、自治体から送付される申請書に必要事項を記載するとともに、マイナンバーカードのコピー等を自治体に提出するのみで税額控除の手続きは完了します。
申請書を受領した自治体は、ふるさと納税を行った本人が住む自治体に対し、「この方からいくらの寄付を受領したので、来年の住民税をその分控除してください」といったやり取りが行われます。その結果として、来年6月の給与から天引きされる住民税が少なくなる、といった仕組みになっています。
確定申告
上記のワンストップ特例制度を利用することができない場合やワンストップ特例申請書の提出期限を過ぎてしまった場合などは、確定申告を行う必要があります。もともと確定申告をする予定の方はそこまで負担が増えることはありませんが、ふるさと納税のためだけに確定申告するような方は非常に負担が大きくなりますので、可能であればワンストップ特例制度を使用することをオススメいたします。
なお、ワンストップ特例制度を利用した場合の税額控除は全額が住民税から行われる一方で、確定申告でふるさと納税の申請を行った場合は、所得税の所得控除と住民税の税額控除の両方から控除されることになります(合計額はどちらも変わりません)。
2. ふるさと納税の注意点
このように、メリットが大きいふるさと納税ですが、注意点もそれなりに多く存在しますので、最悪の場合は損してしまう可能性もあります。下記に主な注意点を記載いたしますので、しっかりと内容を把握しましょう!
2-1 限度額
とてもお得なふるさと納税ですが、税額控除を受けられる限度額が存在しますので、限度額を超えないように寄付を行うことがポイントになります。限度額を超えた寄付を行った場合は、限度額までは住民税から控除されますが、それ以上の金額については文字どおり寄付した形となります。
なお、限度額は基本的に所得をベースに求めることができますが、様々な要件によって変動しますので、下記の限度額シミュレーションサイトを参考にしてください。
総務省
さとふる
ふるさとチョイス
楽天市場
au Pay
ふるさと本舗
ふるなび
2-2 ふるさと納税を行う自治体の数
ふるさと納税を行う自治体が5までであれば、ワンストップ特例制度を利用することができます。しかし、6以上の自治体に寄付をする場合は確定申告をする必要がありますので、確定申告をする必要がない方はご注意ください。
2-3 寄付先の自治体選択
ふるさと納税の制度趣旨からすると、「自分が生まれ育った自治体」が「ふるさと」になりますが、必ずしも生まれ育った自治体に寄付しなければならないということはありません。
全国各地どこの自治体もふるさとになりますので、寄付を行う自治体は自分の好きなところをお選びいただいて構いません。
2-4 ふるさと納税を行う期間
2024年1月1日から12月31日までの所得に対するふるさと納税は、2024年12月31日までに寄付を完了する必要があります。そして、ワンストップ特例制度を利用する場合は、2025年1月上旬までに自治体に申請書を送付する必要がありますのでご注意ください。なお、期日までに申請書を提出することができなかった場合は、確定申告を行う必要があります。
また、年間の所得が確定するのが12月になりますので、限度額も同時期に把握が可能になります。その結果、年末に集中してふるさと納税を行うことになることが多くなることから、寄付のし忘れや翌年のふるさと納税対象期間に属する可能性がある旨、ご注意ください。
さらに、一度に集中して行うことの別視点でのデメリットとしては、食品を返礼品として選択した場合は冷蔵庫・冷凍庫に入りきらないという可能性もありますので、返礼品の送付時期をずらすなどの対策を行うことをオススメいたします。
その他の対策としては、ふるさと納税を実施する時期を分けることが考えられます。以前の私がそうでしたが、上記のとおり、限度額が確定した段階で全額一気に行う方もいらっしゃると思います。
しかし、例えばですが、夏頃に一度今年の所得の見積りを行い、確実に限度額に満たない額をふるさと納税し、12月の限度額確定後に限度額まで実施する方法です。このやり方ですと、年末に集中することもなくなりますので、ふるさと納税し忘れや冷凍庫問題も解決するかと思います。
2-5 制度改正の可能性
ふるさと納税は2008年に開始されましたが、当初はほとんど利用している人はいませんでした。返礼品がお得ということから、人々に徐々に認知され始め、爆発的に増加してきたのが2015年ぐらいになります。
その後、ふるさと納税の制度趣旨から外れているといった観点から、返礼品の上限が寄付額の3割、合わせた経費率が5割以下となるなど、制度改正が何度も行われています。
そのため、今度も制度改正が行われる可能性があり、その内容は寄付をする側にデメリットとなることが考えられることから、その年のなるべく早い時期に限度額を超えない程度の寄付を行うことをオススメいたします。
2-6 ワンストップ特例制度と確定申告の併用
ワンストップ特例制度を利用するために申請書を自治体に送付した後、会社での年末調整で生命保険料控除を行うのを忘れた、医療費が高額であったため医療費控除を受けたい、などという理由から確定申告をする場合があると思います。
ワンストップ特例制度のあとに確定申告を行った場合は、確定申告が優先されることから、ワンストップ特例制度は無効となります。そのため、確定申告の際に、ふるさと納税による寄付金控除についても記載する必要がありますのでご注意ください。
3. 年末調整の基礎知識
ここでは、年末調整ってそもそも何?という基本的な事項から、年末調整と確定申告の違いなどを簡単にをお伝えいたします。
3-1 年末調整の必要性
会社員の方が毎月受け取っている給与ですが、所得税や社会保険料などが天引き(源泉徴収)された額が振り込まれています。こちらの所得税の源泉徴収額ですが、所得に応じたざっくりとした額が計算され、毎月控除されています。
この源泉徴収額はあくまでも暫定で控除されているものになりますので、毎年12月に1年間の給与(所得)が確定した段階で正しい所得税を計算する必要があり、会社側で行う手続きを年末調整といいます。
毎月の源泉徴収額は少し多めに控除されていますので、大半の方は年末調整を行うことにより還付金を得ることができます(何もし知らなかったころは、よくわからないけど還付金もらってラッキーと思っていましたが、払い過ぎたものを返してもらっていただけなので、結果的に何も変わらずぬか喜びだったことを後に知りました)。
3-2 年末調整と確定申告の違い
年末調整は会社で行う手続きであり、生命保険料控除など一部の所得控除についての調整を行うものになります。一方で、確定申告は自分自身が行う手続き(税理士に依頼する方法もあります)であり、すべての所得とすべての所得控除などを申告することが可能です。
基本的に会社員の方は確定申告が不要になりますが、年間の医療費が高額になった場合など、年末調整を行うことができない医療費控除を受けたい場合などは、会社員の方でも確定申告をすることになります。
なお、確定申告の要否については、過去のこちらのブログをご参照ください。
4. ふるさと納税をした場合の年末調整
それでは、ふるさと納税を行った場合、年末調整にどのような影響を与えるかを実際に見ていこうかと思います。
まず、ふるさと納税による寄付は所得税の計算上、「寄付金控除」という所得控除に該当します。そして、上記3-2で記載したとおり、年末調整により所得控除を行うことが可能になりますが、その所得控除は、生命保険料控除、扶養控除、寡婦控除、社会保険料控除、配偶者控除、障碍者控除、勤労学生控除、小規模企業共済等掛金控除、地震保険料控除、住宅借入金等特別控除(2年目以降)、基礎控除となります。
一方で、年末調整での調整が不可能な所得控除は、医療費控除、寄付金控除、雑損控除の3つとなり、ふるさと納税の寄付金控除は年末調整での調整を行うことはできません。
そのため、ワンストップ特例制度を利用する、ワンストップ特例制度を利用せずに確定申告する、どちらの場合でも、年末調整をする際にふるさと納税については何も考慮する必要はありません!
5. まとめ
上記のとおり、ふるさと納税と年末調整には何も関係性がないことから、年末調整時にふるさと納税について何か記載する、寄付金受領書を提出するなどの必要はありません。
そのため、ワンストップ特例制度を利用するのであれば申請書を自治体に送付するだけで完結し、確定申告を行う場合は確定申告時に申請を行うことになりますので、ふるさと納税を行った場合の年末調整での対応は不要となります!
※こちらの記事は2024年3月19日時点の情報となりますのでご留意ください。
※また、板橋区の奥村公認会計士税理士事務所では、税務顧問や確定申告、節税に関するご相談も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。