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アルバイトをしている人の定額減税はどうなるの?パターン別にわかりやすく解説します!

アルバイトをしている人の定額減税について。場合分けをして解説

令和6月から行われる定額減税。アルバイトをしている人の定額減税はどのようになるのかを、いくつかのパターンに分類しましたので、それぞれをわかりやすく解説します!

1.定額減税とは?メリットや仕組みを解説

定額減税とは?制度趣旨など基本的なことを解説

最初に、そもそも定額減税とは何のために行われるのかという制度趣旨や、メリット・デメリットを解説いたします。

1-1 定額減税とは?

定額減税とは、令和6年の所得税・住民税を合計4万円減税する制度であり、令和5年12月22日に令和6年度税制改正大綱として閣議決定されました。昨今の物価高に賃金上昇が追いついていないことから、物価高をカバーする目的で定額減税が行われることになりました。

ここからは余談になりますが、現岸田総理が「増税メガネ」などと揶揄されていることから、そのイメージを払拭するために定額「減税」としての対応となったのではないでしょうか。
下記にも記載いたしますが、会社の給与計算等が相当複雑になることから、「減税」ではなく「給付」といった形の方が現場は楽になったかと思います。


1-2 メリット

定額減税のメリットは、なんといっても今年の6月1日以降支給される給与から、所得税及び住民税の源泉徴収額(給与から天引きされる額)が減少することになります。
源泉徴収額が減少するということは、手取り額が増加することを意味するため、定額減税が導入された目的である物価高をカバーするということは達成されたことになります。

しかし、4万円の定額減税のみでは、正直なところ昨今の物価上昇に対応しきれていないようにも思えてしまいます…


1-3 デメリット

上記のとおり、給与所得者で定額減税を受ける方(会社の給与計算者については下記に記載しますので、ここでは除外します)にとってのデメリットらしいデメリットは、ほとんどないかと思います。

一方で、個人事業主の方は源泉徴収が行われないことから、毎月減税されることで手取りが増加するということはなく、来年の確定申告で当該減税が考慮されることになります。
したがって、個人事業主の方は減税の恩恵を受けられるタイミングが半年以上遅くなる、というデメリットが存在します。

昨今の物価上昇に伴う政策であるものの、恩恵を受けられるのが来年なのは少し遅い気もします。




2.誰が対象?定額減税の条件とは?

定額減税は誰が対象?いくら減税されるの?

ここでは、定額減税の対象者やいくら減税されるのか、いつ減税されるかなど具体的な事項を確認していきます。

2-1 対象者

定額減税を受けられる方は、次の2つの要件をともに満たす方になります。

令和6年分所得税の納税者である居住者(注1)

令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下(注2)

(注1)居住者とは、国内に住所を有する個人または現在まで1年以上国内に居住している個人をいいます。

(注2)子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下


2-2 定額減税額

具体的な減税額ですが、所得税と住民税それぞれ下記のとおりとなります。

所得税

① 本人(居住者に限る)3万円
② 同一生計配偶者または扶養親族(ともに居住者に限る)1人につき3万円

住民税

①本人(居住者に限る)1万円
②控除対象配偶者または扶養親族(ともに居住者に限る)1人につき1万円


減税額は上記のとおりですが、下記では具体例のような家族構成の場合に減税額がいくらになるのかをシミュレーションしてみました。

<具体例>

本人:54歳会社員
配偶者:専業主婦(所得なし)
扶養親族(子):17歳高校生(アルバイト年間収入20万)、13歳中学生

この場合の定額減税額ですが、本人も含め計4人になりますので、4人×4万円の合計16万円(所得税12万円、住民税4万円)となります。


【扶養親族について】
少し勘違いしやすいポイントかもしれませんので、扶養親族について補足いたします。

所得税法上の「扶養親族」とは、下記の4要件をすべて満たす方をいいます。

 配偶者以外の親族または都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人であること。
 納税者と生計を一にしていること。
 年間の合計所得金額が48万円以下であること。
 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

そして、所得税法上の同じような用語で「控除対象扶養親族」というものがあり、こちらは扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の方をいいます。
控除対象扶養親族に該当する方は、年末調整または確定申告において扶養控除の対象になりますので、所得から1人あたり38万円の控除を受けることができます。


上記の例の場合子供が2人いますが、1人は13歳であることから扶養親族には該当しますが、控除対象扶養親族には該当しません。そのため、所得控除を受けることができるのは17歳の子供1人になりますので、所得控除は38万円×1人=38万円となります。

したがって、所得控除は「控除対象扶養親族」が対象であることから1人分の恩恵を受けることが可能であるのに対し、今回の定額減税は「扶養親族」が対象であることから、2人分の減税を受けることが可能です。


このように、少しだけ勘違いしやすいポイントがありましたので、ご注意いただければと思います。


2-3 いつ減税されるのか

今回は「給付」ではなく「減税」になりますので、全員が同じタイミングで減税されるわけではありません
また、会社員と個人事業主など、減税されるタイミングも個人の状況によって異なることから、そのすべてを記載すると相当細かくなってしまいます。
したがいまして、ここでは一般的な会社員予定納税なしの個人事業主の2つのみの記載とさせていただきます。

こういう場合はどうなるの?など不明点がある方は、お問い合わせよりご連絡いただければご回答させていただきます。


<会社員の場合>

所得税
令和6年6月1日以降に支払われる給与から、源泉徴収される所得税が限度額(定額減税対象者が4人の場合12万円まで)に達するまで毎月控除されます。限度額まで達した場合は、その後の源泉徴収所得税は通常どおりに行われます。
なお、令和6年中に控除しきれなかった場合は、給付という形で補填されますのでご安心ください。

所得税の月次減税の例

引用:国税庁 「給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた」p6


住民税(特別徴収)
所得税と同様の控除方法であればわかりやすいのですが、若干異なりますので以下ご確認ください。
まず住民税ですが、令和5年の所得に対する控除は令和6年6月~令和7年5月の1年間にわたって均等に行われます(所得税は毎月の給与から都度控除されますが、住民税は遅れて控除されるイメージです)。

今回の定額減税ですが、まず令和6年6月の住民税はゼロになります。そして、7月から翌年5月末での11カ月間で、定額減税額が控除されたあとの住民税が均等に控除されることになります。

余談ですが、定額減税額が1ヵ月の住民税額に満たないような場合は、6月の住民税が強制的にゼロとなってしまうことから、7月以降の住民税控除額が通常より多くなってしまいます

当然ながら、年間トータルで考えると定額減税分お得なのですが、単月でみた場合には定額減税がなかった場合と比較して、7月以降の住民税控除額が多くなってしまう(手取りが減る)のは少し面白くないかもしれません。




<予定納税なしの個人事業主の場合>

所得税
会社員と異なり毎月の給与がありませんので、令和7年2月~3月に行われる、令和6年分の確定申告時に全額控除されます。

住民税
第1~4期の住民税通知書が届きますので、第1期分から定額減税分が控除されています。第1期のみでは控除しきれなかった場合は、2期以降に順次控除されることになります。

予定納税なしの個人事業主の場合は、所得税の定額減税の恩恵を受けられるのがほぼ1年後になりますので、政策として昨今の物価上昇にタイムリーに対応しているかどうか、という観点では正直なところ微妙かと思います。



3.定額減税の申請方法や手続き

定額減税の申請方法や手続きを解説

定額減税を受けるためには、どのような対応・手続・申請をすれば良いかを、定額減税を受ける本人と会社側それぞれについて記載いたします。

3-1 個人での申請方法

予定納税がない個人事業主の場合は、確定申告の際に全額控除されますので、定額減税のために新たに申請をする等は不要になります。一方で、会社員の場合は定額減税を受ける扶養親族の数を会社側で把握するため、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」を記載する必要があります。

自分で能動的に動くというより、会社側から記載してくださいとお願いされると思いますので、必ず提出期限までに記載及び提出するようにしてください。

国税庁:令和6年分 源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書




3-2 会社の対応

さて、今回の定額減税ですが、減税を受ける個人として考えた場合は、特段の手続き不要で減税される(手取りが増える)ことから、非常に大きなメリットかと思います。

一方で、会社の給与計算担当者の事務手続きは相当混乱することが想定されます。令和6月1日以降支給される給与から定額減税が開始されることから、5月頃に3-1で記載した「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」を従業員に配布、回収する必要があります。
その申告書に記載された扶養親族の数をもとに、それぞれの従業員の減税額を計算し、毎月の給与に反映していくという対応がありますので、非常に複雑なものになってくると思います。

また、定額減税は今年のみの対応であることから新たに実務を覚えるインセンティブが低い、給与計算システムの対応が必要、従業員から提出された申告書に記載の扶養親族の数が誤っていた等、色々な問題が考えられることから担当者の負担は大きくなります。



4.定額減税がふるさと納税や住宅ローン控除に与える影響

定額減税とふるさと納税、住宅ローン控除との関係性は?

2024年分のふるさと納税の一部を既に行ってしまった場合は、定額減税はどうなるの?住宅ローン控除は?など、特に気になる2つについて解説いたします。

4-1 所得税と定額減税との関係

簡単ではありますが、ざっくりとした所得税の計算方法を復習したいと思います。

会社員(給与所得者)の場合は、給与収入から収入額に応じた給与所得控除を控除し、給与所得(儲け)を算出します。その儲けから、支払った社会保険料を控除できる社会保険料控除や、全員が同一で48万円の控除を受けられる基礎控除などを控除して、「課税所得金額」を算出します。そして、その「課税所得金額」に額に応じた税率を乗じることにより「所得税」が確定することになります。

このように最終的に確定した「所得税」から減税が行われることになりますので、直接的な関係にあるといえます。なお、2-3でも記載いたしましたが、所得税よりも定額減税額の方が多い場合は、足りない分を給付という形になりますのでご安心いただければと思います。


4-2 ふるさと納税と住宅ローン控除

ここでは、定額減税がふるさと納税及び住宅ローン控除(借入金等特別控除)にどのような影響を与えるのかをお伝えいたします。

結論から申し上げますと、定額減税がふるさと納税及び住宅ローン控除に与える影響は何もありません。そのため、ふるさと納税の限度額なども今までどおりの計算をしていただければ問題ありませんのでご安心いただければと思います。

<ふるさと納税>

令和6年税制改正大綱において、ふるさと納税に関しては下記のように記載されています。

(6)以下の額の算定の基礎となる令和6年度分の所得割の額は、特別控除の額を控除する前の所得割の額とする。

① 都道府県又は市区町村に対する寄附金税額控除(ふるさと納税)の特例控除額の控除上限額

引用:令和6年税制改正の大綱

こちらの記載を要約すると、ふるさと納税の限度額は定額減税を控除する前で決まるので、結局過年度と何も変わらないということになります。


<住宅ローン控除>

こちらも上記のふるさと納税と同様ですが、住宅ローン控除を控除したあとに定額減税が行われていますので、定額減税によって住宅ローン控除の額が少なくなってしまう等の影響は何もありません

住宅ローン控除が定額減税に与える影響はなし

引用:国税庁 「給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた」p11

なお、ふるさと納税に関しては、過去のブログもご参照ください。



5.アルバイトをしている人の定額減税

アルバイトをしている人の定額減税はどうなるの?パターン別に解説

それでは、アルバイトをしている人の定額減税はどうなるのか、個人の状況に応じて複数のパターンが考えられますので、それぞれ場合分けを行ったうえで解説いたします。

5-1 会社員でアルバイトをしている人

以前は禁止していた会社が多くありましたが、昨今働き方の多様化が行われてきた影響から、アルバイト(副業)を認めている会社が増えてきました。

そのような場合の定額減税ですが、会社員である以上、令和6年6月以降の会社からの給与から「2-2 定額減税額」で記載した額が毎月控除されることになります。そのため、アルバイトの有無が定額減税に与える影響は何もありません

なお、アルバイト(副業)を行うことにより確定申告の必要が生じる可能性がありますので、過去のこちらのブログを参考に確定申告の有無をご確認ください。


5-2 アルバイトのみの人

上記の会社員の場合と異なり、若干複雑になるのがアルバイトのみの方になります。

① アルバイトの収入が103万円以下であり、扶養に入っている場合

上記2-2の17歳高校生のような場合がこちらに該当しますが、この場合は、扶養している側(親など)でアルバイトをしている本人分の定額減税も行っていることになります。

そのため、アルバイトをしている本人には何の影響もありません

② アルバイトの収入が103万円を超える場合で源泉徴収あり

アルバイトの年間収入が103万円(給与所得控除55万円、基礎控除48万円、合計103万円)を超える場合は、税法上の扶養から外れるとともに、所得税が課税されます。

そのため、アルバイト先で源泉徴収されることになりますので、毎月の源泉徴収時に定額減税が行われます。
最終的には年末調整時に所得税が確定し、定額減税分が引ききれない場合はその分給付になります。

③ アルバイトの収入が103万円を超える場合で源泉徴収なし

上記②のパターンとの違いとしては、アルバイトを複数掛け持ちしている等で、給与から源泉徴収されていない場合になります。

収入が103万円を超えることから、この場合は確定申告が必要になりますので、翌年の2月~3月に実施する確定申告時に定額減税分控除されることになります。




6.まとめ

定額減税とアルバイトの関係性についてのまとめです。

上記のとおり、今回の定額減税については個人の状況に応じた様々なパターンがありますので、本人のみならず会社側でも混乱が生じる可能性が高いかと思います。そのため、適切な定額減税が行われているか否かを、源泉徴収票や住民税通知書を見て確認することをおすすめいたします。

なお、考え得るパターンが多すぎることから、こちらのブログではすべてを網羅しておりません。こういう場合はどうなるの?という場合は、お問い合わせいただければご回答差し上げます。

※こちらの記事は2024年3月29日時点の情報となりますのでご留意ください。
※また、板橋区の奥村公認会計士税理士事務所では、税務顧問や確定申告、節税に関するご相談も受け付けておりますので、こちらよりお気軽にお問い合わせください。


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